君が好き

 

 4

  

 プリム、元気?

 タスマニカで久しぶりにプリムと長く過ごせて良かった。

 というのは、実は、またしばらく予定が合わないようなんだ。

 プリムはパンドーラでの仕事が続くということだけど、僕は少し各地を回ろうと思っている。

 ヴィヴィアンさんからマナの種族のことを教えてもらって、調べたい場所がいくつかできたんだ。ごめん。予定がはっきりしたらまた連絡する。

 

 そうだ、ヴィヴィアンさんと言えば。あの歌は本当に素晴らしかったよね。

 あの歌の歌詞の言葉は、マナの種族だけがわかる言葉なんだって。だから、僕にも少し理解できた。

 その中でも印象に残っていた部分がある。うろ覚えではっきりしないんだけど――


 あなたの笑顔を心に抱いて

 どこまでもどこまでも旅しよう


 僕はいつでも、プリムのことを想っている。

 では。

 

 

 何かおかしいのよね。

 パンドーラの自室で、プリムは一人呟いた。

 机の上には、読み終わったランディからの手紙が乗っている。

 「うーん」

 タスマニカで久しぶりに二人で過ごした後、プリムは仕事のために一人でパンドーラに戻ってきた。
 
 その後、タスマニカにまだ滞在しているはずのランディに、今後はしばらくパンドーラにいる、と手紙を出したところ、今日返事が来たのだ。

 プリムの方が仕事に拘束されやすい。そのため、どこに行くかを自分で決められるランディが、なるべくプリムに合わせるようにしてくれていた。

 だが、今回は、ランディもマナに関する調査を優先させたいという。

 最近、同じようなことが多いのだ。タスマニカで会う前も、二、三ヶ月ほどほとんど予定が合わなかった。こうなってくると、合わないのではなく、ランディが意図的に合わないようにしてるのでは、と思ってしまう。

 ――避けられてる?でも、気持ちが冷めたってわけじゃなさそうだし。

 もう恋人同士という関係になってからしばらく経つのに、いまだに照れが残っているらしくすぐに顔を赤くするランディを見ていると、自分から気持ちが離れたということは考えにくい。

 プリムはもう一度手紙を読み返す。

 そして、あ、と声を上げた。

 「そうか。行き先が書いてないからはっきりしないんだわ」

 各地を回る、とは書いているが、具体的な行き先が書かれていない。

 なんだか、うまくぼかそうとしてる?

 自分が行くところを知られたくないみたい。

 慰霊祭の前、そう、私たちが恋人になる前、ランディが私に会わないようにしていた頃に送ってきていた手紙がこんな感じだった……。

 そこまで考えて、プリムはぎくりとした。

 ――まさか。

 「考えすぎ、かしら……」

 プリムはためらいながらも、手紙を書くためにペンを手に取った。

 

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2009.7.12

 

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