最後から二番目の真実
喉の奥が熱い。早い鼓動と、荒い自分の息遣いが聞こえる。
渦巻く炎の火の粉が舞い、熱気が迫ってくる。
傍らには、目元を真っ赤にしたプリム。そして、正面には、真剣な顔をしたポポイの顔がある。
ポポイの赤い髪が、炎に照らされて光るように見えた。場違いに綺麗だな、なんて思う。
ポポイが急ににかりと歯を見せて笑った。
「……やだなあ、何いってんだよ!べつに死ぬわけじゃないんだよ」
無理をして明るく言おうとしているのがわかる声色だった。
要塞が崩れ落ちる音が響き渡る。
「この世界から妖精や精霊たちの住む世界がふたつに分かれて、会えなくなるってことなんだ!」
まるでたいしたことじゃないかのように。
「神獣を倒せるのは聖剣を持っているアンちゃんだけだよ!逃げちゃだめだ!」
静かながら温度の高い青く輝く炎のように、決意を秘めた瞳がランディを射抜く。
そんな風に言われたら、もう何も言えないじゃないか。
ずるいよ、ポポイ。
はっとランディは目を開けた。
一瞬、自分がどこにいるのかがわからなくなり、辺りを見回す。
自分の部屋だと認識し、少しほっとする。
戦いが終わった後、ランディはポトス村の村長の家に今も世話になっている。かつてから使っていた自室を使わせてもらっているのだ。
ゆるく息を吐くと、堅くなった身体を起こす。どうやら机の上で本を読んだまま、いつのまにか眠ってしまったらしい。
パンドーラの本屋で買ってきたマナに関して記述された新刊が思いのほか興味深く、読みふけってしまった。
時計を見ると深夜だった。ベッドで寝ないと、とランディは机の上の明かりを消そうと手を伸ばす。
そのとき、開いたままの本のページが目に入ってきた。どこまで読んだっけ、となんとはなしに文字を追う。
「……?」
そのとき、頭の中で何かが引っかかった。それが何かわからず、もう一度文章を読む。指でその文をなぞり、慎重に繰り返し頭の中で呟く。
自分の息を呑む音が聞こえた。