あなたへ
アンちゃん。元気ですか。
オイラは元気です。精霊たちも一緒にいてくれるし。
もっと寂しいかと思ったけど、けっこう楽しくやってます。
だから、余計、アンちゃんのことが気になります。
アンちゃん、元気ですか。きちんと食べていますか。きちんと寝ていますか。
オイラのことを思い出して、悲しくなっていませんか。
戦いのことを思い出して、苦しくなっていませんか。
アンちゃんのことが心配です。
アンちゃんは、すぐ自分の中にいろいろ溜めこんじゃうから。自分からはそれを言わないから。
アンちゃん。
自分のしたことを、悔んでいますか。
自分の救った世界を、憎んでいますか。
自分の救った人間を、恨んでいますか。
アンちゃんは剣の才能があったと思う。旅に出てから自己流で身に付けたにしては、すごく強かった。
でも、アンちゃんの本性は、戦う者としては向いてなかったと思う。
アンちゃんは、優しすぎる。
アンちゃんがもっと、倒した敵の数を誇れるような人だったらよかったのに。世界を救ったことを、勲章にできるような人だったらよかったのに。
だったらアンちゃんは、苦しまなかっただろうにって思います。
アンちゃんは、きっとオイラを恨んでいるだろうね。
最後の最後で迷ったアンちゃんの背中を押したのは、オイラだ。
アンちゃんにオイラを消させてしまったのは、オイラ自身だ。
それが世界のためとはいえ、辛い役目を背負わせてしまった。
そしてアンちゃんは、きっと人間を恨んでいる。
自分に世界を救わせた人々を。自分にオイラを消させた人々を。
そして、そんな風に思ってしまう自分を、一番嫌いだと思っている。
オイラが傍にいられればよかったんだけど。
それはもう無理だから。
でも、アンちゃん。大丈夫だよ。
慌てなくてもいい。頑張らなくてもいいんだ。
オイラは、あの世界のいろんなところにいる。
例えば、オイラのことを覚えている人と話したり。オイラと行ったところを訪れたり。
それだけで、そこにオイラはいるんだ。
だから、泣かないでほしい。
きっと、少しずつでも、また人を愛せるし、世界を愛せる。
だから、アンちゃん。また笑ってくれよ。
この祈りが、届くとは思っていない。
そんなに現実は甘くない。
けれど、祈ることは許されるはずだ。
アンちゃん、元気で。
また、いつか。
s/al/yuの「to U」を聴きながら。
2010.4.8