自覚
その日、ポトス村からやってきたランディとパンドーラからやってきたプリムは水の神殿で落ち合った。
ルサ・ルカから、久しぶりに会って三人で積もる話でもしよう、と誘われたのだ。
戦いが終わってから会うのは久しぶりで、ずいぶんと話し込んでしまった。
日が落ちそうなことに気付き、ランディはプリムをパンドーラまで送っていく、と申し出た。
だが、パンドーラに向かい始めてすぐに折悪く嵐がやって来た。
慌てて二人は近くにあった狩猟小屋に避難した。
嵐はひどく、朝まで静まりそうにない。加えて、完全に日も落ちてしまった。
「はー、助かったわね、こんなところに小屋があって。小屋の持ち主には悪いけど、こうなったら今夜はここで過ごすしかないわね」
「う、うん」
水に濡れてしまった髪を絞るプリムに対し、ランディはぎくしゃくとして返事を返した。
「幸い、暖炉もあるし……薪もあるわね。火をつけてあたたまりましょ。……ランディ?」
プリムは一向に反応しないランディを訝しげに見た。
ランディはプリムとは別のあらぬ方向を見ている。
「な、何?プリム」
「それはこっちの台詞よ。私は着替えを捜してくるから、火をつけておいてよね」
そう言ってプリムは小屋の奥に歩いていく。プリムが視界から消えると、ランディは安堵のため息をついた。
「食糧もあったし、大助かりね!あとは寝て、嵐が過ぎたらパンドーラに帰りましょう」
服を着替え、暖炉の火で暖まり、食べ物を口にした二人は人心地ついたところだった。
窓の外はまだ荒れ狂うような嵐がおさまらないでいる。外に出るのは無理だろう。
「じゃあ寝ましょうか。向こうの部屋にベッドがあったわよ」
プリムは立ち上がったが、ランディは動かない。そういえば、食事中も全く口をきかなかった。プリムは先程から様子のおかしいランディの様子に眉をひそめる。
「何してるのよ、ランディ。行かないの?」
「……いや、僕はここで寝るよ」
「え?」
プリムは思わず声をあげた。
「気にしなくても、ベッドは二つあったし……旅しているときは同じ部屋で寝るなんてことよくあったじゃない。何を今さら」
「プリムにとっては今さらでも!」
ランディが久しぶりにプリムに目線を合わせた。
「服が濡れて肌が透けているの見せられて、ポポイがいない、二人っきりの状況で同じ部屋で眠れって言われて……僕が平気だなんて思ってるの?」
ランディの言葉に、プリムがじわじわと頬を染めていく。最後には真っ赤になってしまった。
ランディも同じくらい顔を赤くしていた。
「頼むよ……僕だって男なんだよ」
ランディはそう呟くと、リビングの床に寝ころび、手じかにあったブランケットを頭からかぶってしまった。
プリムはもう何も言えず、慌ててベッドのある部屋に向かった。
二人とも、嵐が止む朝方まで、一睡もできなかった。
2010.4.8